作家修行中の人にとって、作家を目指すという選択は正しいのか、という疑念がつきまとったりするかもしれません。そうでない人もいるでしょうが。

かくいう自分も、疑念を持つ類なのですが、一方で、作家を目指す以外にないんじゃないか、という考えもあります。「詩人になりたい、でなければ何者にもなりたくない」というヘッセの言葉に共感してしまうタイプでもあります。

でも、「自分には、~しかない」という考え方は、いっこうに結果が伴わない状況だと、境遇に対する不平不満につながりやすいという気がして来ました。それを打破するには、自分は作家を目指す道を選んだ、という自覚が必要なんじゃないか、と思います。実際、自分はどこかでその道をいくつかの選択肢から選んだのでしょう。

ロジカルに正解を求める、というやり方も、「自分には、~しかない」という考え方と同じような危うさを持っているように思います。「正しい理念を選び、そこから目標を設定し、最もふさわしい仕事を定め、そのための適切なルートを見つける」と書けば、理想的な人生論になるかもしれませんが、見かたをかえれば、単に一本道を進んだだけ、裏を返せば、「自分には、~しかない」というのと同義だといえます。

「選ぶ」というのは、正解が分からない状況で、右か左かを決断することだとするなら、「正解を選ぶ」という言い方はできなくなります。結局、1秒先も分からないようなしょうもない知性を頼りに、日々あれかこれかと選んでいくほうがいいんじゃないか、と思います。